『電波女と青春男』著:入間人間

良い青春小説でした。これまでの入間作品と比べて表面上黒かったり痛かったりするところがあんまり見えて来ない。予想外に読後感はさわやか。リュウシさんかわいい。

ただ、見えてくるテーマの一部は結構痛い。なし崩し的に「電波な女の子」と関ってしまう話というのは今、結構あると思う。だけれどそういう物語がある意味ジャンルコードとして存在しているのは、読者がそういう関係を望んでいるから、という見方も出来る、かもしれない。
「何でそんな変な女の子がヒロインになりうるの?」「現実にそんな子がいたらどうなの?」といった問いにどう答えるか。いろいろ理由は付けられるかもしれないけれど「でも、結局外見でしょ?」という言葉に頷かざるを得ないときに感じる悔しさはあると思う。
だから、その問いかけが小説中にあることはこの小説で一番面白かったところだ。主人公もその問いには頷く。その上で「青春男」は「電波女」を何とかしようとするのだけれど、その動機は「結局、外見でしょ?」を上書きできている……かどうかはわからないけれど、良い所突くなぁと思った。

電波女と青春男 (電撃文庫)

電波女と青春男 (電撃文庫)