文学少女と神に臨む作家(ロマンシエ)(下) 著:野村美月

小説を書けなくなったベストセラー作家の主人公と、食べてしまうくらい小説が大好きな文学少女の二人が織り成す物語。そんな『文学少女』シリーズの最終巻。最初から最後まで十二分に楽しませてくれたいい作品だった。

これまで、文学作品をモチーフにして物語を展開してきたこのシリーズ。どの巻もよく掘り込まれた解釈で物語を作っていて、ある意味一種の文芸批評的な作品にもなっているのかもしれない。物語をもう一度フィクションとして描きなおす、と言うことはそういう意味でも面白い。そして何より作者のその作品に対する愛情が伝わってくるのが素晴らしい。
そして、だからこそ、と言っていいのかどうかは分からないが、最終巻のテーマはまさに「作家」そのものが物語のテーマとなっている。ものを書くとはどういうことか、作家であると言うこととはどういうことか、それは昔から問い続けられてきたものだろう。
そして、この作品で主人公が出した答えはとても、前向きで美しいものだ。そして、その美しさに説得力を持たせるための十分な下積みが既刊のシリーズで十分に行われてきたからこそ、その答えを僕は違和感無く受け入れられた。その点がこの小説の最も素晴らしいところだと僕は思う。
きっといつかまた、読み直したい。そう思える物語でした。