『君のための物語』水鏡希人

第十四回電撃大賞金賞受賞作の、奇妙で親愛なる彼をめぐる、奇妙で不思議な物語。
表題といい、表紙といい、見たときからこれは自分の好みどんぴしゃだなと思っていたのだけれど、その期待はやっぱり裏切られなかった。読み終わった後に幸福感に包まれた本は久しぶりだった。
落ち着きと軽さを上手く両立させた文章で、読んでいて心地よい。そして、語られる物語は不思議で、哀しく、そして優しい。
少年も少女も出てこないし、一般的にライトノベルといわれる雰囲気とはかなり違っているのだけれど、だけどこの小説がもつある種の真っ直ぐさや青臭さはやっぱりライトノベルだ。
そして、僕はそんな『大人な』大人気なさが大好きなんだと思う。それが、おそらく小学生のころ、「キノの旅」を読んでからずっと僕が感じているライトノベルの一番の魅力なのだ。

君のための物語 (電撃文庫)

君のための物語 (電撃文庫)