「MAMA」感想

二ヶ月前に、この話が載っている「電撃文庫MAGAZINE」を買ってはいたのだけれど、文庫が出るまで読むのを我慢していた。本の形になっていたほうが個人的に一番物語を楽しめるので。

一年前、「ミミズクと夜の王」で電撃大賞を受賞した紅玉いずきの新作。落ちこぼれの魔術師の少女と、人食いの魔物の物語である。
前作でも今回の作品でも感じたことだけれど、彼女の文章はとても静かだ。淡々とただ、その世界で起きたことが語られていく。だが、それ故に、物語での人物の動きや感情がとても生々しく伝わってくる。そしてそれは確かに読者である私の感情を強く揺さぶる。
この話は、一人の少女が成長していく話、に見える。だけど、それじゃあ何が成長したのか?と聞かれると言葉に詰まる。もう既に多くの方が同じような感想を書かれているけれど、この物語で一番大切な何かは、きっと言葉にしてはいけないのだと思う。言葉にするとどうしても陳腐になってしまうから。ただ、少女が大人になり、そして「MAMA」となる姿は、間違いなく美しいものだ、と言うことだけは間違いなく言える。いい物語でした。

MAMA (電撃文庫)

MAMA (電撃文庫)